パル日記(月別一覧)

先週の日曜日は母校、山大へセミナーに行ってきました。
新進気鋭の大学の先生方が、いろいろなテーマで講演されてました。
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特に気になったのは、犬のがん治療の新しいアプローチ。
従来の外科療法、化学療法、放射線療法のほかの治療法、いわゆるがんに対する次の一手です。

これには分子標的療法、がんワクチン、免疫細胞療法(活性化リンパ球や樹状細胞)、そして今山大で治験している腫瘍溶解性ウイルス療法があります。

分子標的薬はいまでもパルで実施してますが、分子標的薬、いわゆるがん細胞のみをを狙い撃ちするお薬です。
重度、もしくは再発した肥満細胞腫などにつかうお薬です。
人の肺がんの薬(イレッサ)やグリベックが有名ですが、最近ようやく犬専用のお薬が発売になりました。
今後が期待されるお薬です。

あと、治験されている腫瘍溶解性ウイルス療法は、海外や人の方ではもう使われている治療になります。
ざっくり説明すると、がん細胞でしか増殖しないようプログラムされたウイルスを使ってがん細胞を破壊してしまおう!という治療です。
患者さんにウイルス感染させて危なくないの?と思っちゃいますが、この治療に利用するウイルスは成人のほとんどが自然感染しているものなので、問題はないとのことです。

いままで延命が難しかった炎症性乳癌や重度の肥満細胞腫に対して期待されるところです。

※もし腫瘍溶解ウイルス療法にご興味がある方は、主治医の先生に相談されてみてください。

おまけの山大正門前の蓮。綺麗です{#emotions_dlg.001}
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フルフル


2014.07.16

心臓血管肉腫

血管肉腫は脾臓、肝臓、まれに皮膚、そして心臓にできるがんです。
人間では皮膚にできることが多いと言われていますが、猫ちゃん特にわんちゃんでは内臓にできる方が多いです。

そして『血管』肉腫という名前の通り、血管内皮細胞ががん化したものですので、がんからの出血がとても多いのも特徴の一つです。詳しくはこちら⇒心臓血管肉腫

イメージとしてはこんな感じ↓
※血が苦手な方は画像をクリックしないでね。
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さらに血管肉腫はどこか一カ所にがんができているのを見つけた時点で他の臓器にとても小さな転移があることが多いと言われていいます。
そのせいか術後の再発がとても多いがんでもあります。
(手術後の平均生存期間は19~86日という報告もあります)

ただ、これらの臓器に血管肉腫ができると、痛みや出血性ショック、DIC(播種性血管内症候群)、出血による心臓の圧迫などでとても苦しむ事が多いので、私自身は、血管肉腫の外科手術は根治手術というよりも、本人の苦しさを和らげて、少しでもいい状態で飼い主さんのそばで幸せな時間を過ごしてもらうための緩和治療ととらえています。

こんなのが心臓に出来た時にはどんなにか怖い事になるか……
…..というのが現実になるのが心臓血管肉腫です。

今日の患者さんは心臓の右心房というところに血管肉腫ができてしまい、そこからの出血で心臓を包んでいる心のう膜と心臓の間に血液がパンパンに溜まってしまって心臓の動きが悪くなる病気、心タンポナーゼになってしまった子です。
残念ながらもうすでに亡くなられていますが、飼い主様の承諾を得てブログに書かせていただいています。

海に行くのが大好きな、フラットコーテッドレトリバーという犬種の11歳の男の子です。
いつも大変元気な子なのですが、ドックランで走った後いつもより元気がないとのことで来院されました。

シニアの大型犬ですので、心臓に問題があるのかもしれない…..ということでエコー検査を行ったところ、心のうに多量の血液が溜まっていて心臓の動きが悪くなっています。
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針を刺してこの液を抜いてみたところ、血液が溜まっていることがわかりました。
抜いた後は心臓の動きがよくなるので、すぐにいつもの元気を取り戻して帰りは走って帰って行かれました。

それから数日は大丈夫だったのですが、また心のうに液が溜まって、きつくなって抜いて、また溜まって…..というのを何度も繰り返しましたので、飼い主さんと相談して少しでも楽に生活できるように、という緩和治療の目的で、心のう膜切開を行うことにしました。

※ちいさな画像をクリックすると大きくなります。血が苦手な方はクリックしないでください。

心のう膜切開術を行うために、今回は右肋間から心臓にアプローチしていきます。
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シビアな手術ですので、今回観血血圧測定(動脈に留置針を入れてそこから直接血圧を測る方法。漫画やテレビドラマの医龍とかではよく人間の手首の動脈に設置してましたねをバラ先生がしてくれました!
これで術中の微小な血圧の変動をモニターすることができます。
ダークブルーの波が観血血圧です↓
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胸腔を開けたとこです。上に白っぽく見えるのが肺。下のやや赤っぽいのが心のう膜につつまれた心臓です。
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心のう膜を電気メスとハサミで切開していきます。
赤黒いがんが見えてきました!
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心のう膜切開直後は、中にたまっていた大量の血液が一気に出てきます!
溜まっていた血液を吸引し、心のう膜を切開して広げていくと、血液の圧迫がとれてみるみる心臓の動きがよくなっていきます。
たとえて言うなら、サラリーマンがネクタイを緩めてほっと一息ついた感じでしょうか?
がんはかなり大きくなっていて、残念ながらとても切除できる状態ではありませんでした…..
ただ心のう膜を切除することで今まで心のう膜と心臓の間にぱんぱんに溜まっていた血液が今後は溜まらなくなるので、少しの間ですが心臓の負担を軽くするできることが期待できます。
がんからのジワジワ出血は止めることができないのですが、ある程度の血液は胸腔の中で吸収されます。
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あとは肋骨の間に丈夫な縫合糸をかけて胸腔を閉じていきます。
肋間筋のすぐ下に白っぽい肺が見えています。
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皮膚縫合が終わったところです。
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胸腔の手術はとても痛いので、鎮痛目的でフェンタニルパッチをはります。
末期がんの方の苦しさをやわらげる貼り薬でもありますが、3日間鎮痛効果があるのでこういう手術の時にはよく利用しています。
あと、この子は緩和療法ということもあり、少しでも早く飼い主様のもとへ帰してあげるためにも積極的な鎮痛は欠かせません。

本当は1週間以上入院させたいところですが、残された時間を1秒でも長く飼い主様のそばで、ということで手術翌日にお家に帰っていただきました。
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その後は通院しながら美味しいご飯をたべて、いつもどおり散歩に行って、大好きだった芦屋の海にも行って散歩犬仲間全員と遊んで、最後ちょうど手術から1か月後に仕事から帰ってきたお父さんの腕の中で亡くなられました。
ご冥福を心からお祈りします。

フルフル






今月初めの土日曜日、お休みをいただいて宮本先生と東京へがん学会へ行ってきました!

去年まで会場は麻布大学だったのですが、今年は大都会のど真ん中、銀座のスクエアガーデンというところで開催されました。
田舎者のわたしとしてはちょっと落ち着きませんが、駅からのアクセスがとてもよくて助かりました。
大学だと、空港から1時間半ぐらいかかることもあるので…..
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今回のメインテーマは高分化型リンパ腫と慢性白血病。造血系腫瘍です。
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人間もそうですが、造血系腫瘍の分類法はとても複雑で、臨床・病理の先生方はなんとか理解しやすい、かつ体系的な分類を確立していこうと頑張っていらっしゃいます。

同じ『リンパ腫』でも、タイプによっては再発しにくい性格のおだやかなのとか、超悪性とか、抗がん剤がすごく効きやすいの、効きにくいの、と性格がかなり違います。
さらにがん研究が進んでいる海外でも、ヨーロッパとアメリカでは好まれる分類法が違うという事情もあり複雑のようです。
病理の先生方も日々研究されていらっしゃるようです。

そんな事情を反映してか、場所が良かったせいか、今回のがん学会は朝から大盛況でした。
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いつもは朝一の講義は空席が目立つことが多いのですが、開始時間にはもう立ち見が出ていました{#emotions_dlg.112}

よくお世話になっている動物病理診断センターの田邊先生が講義のトップバッターだったのですが、『朝一だからぜったい参加者少ないと思ってたのにっ!』と言われてました。

余談ですが、田邊先生は日本人でアメリカの獣医の病理専門医を所得された{#emotions_dlg.001}第一号です{#emotions_dlg.001}
(ちなみに第二号の先生は、大手病理検査センターに勤めている方です。二人とも女性)
なんでそんなにすごい方が隣町にいるのかは北九州の七不思議のひとつですが、パルにとっては気軽に病理検査を持って行けて相談できるのでとてもラッキーです{#emotions_dlg.098}

あと今回の学会での外科系の講義では、出血している腫瘍への対応、特に血管肉腫についていろいろな先生方がお話しされていました。
血管肉腫は人では皮膚にできることが多いらしいのですが、犬猫では肝臓や脾臓、心臓にできることが多いとても予後の悪いがんです。
『血管』の名前の通りこれらの臓器の血管内皮細胞から発生し、大きなしこりを作ります。また、ときにはそのしこりが破れておなかや胸の中で大量出血することも少なくありません。
難しいがんのひとつです。

次のブログで、心臓血管肉腫になった子のお話を書こうとおもっていますので、詳しくはそちらをご覧ください{#emotions_dlg.074}


余談ですが今回のお宿は築地。
夜で真っ暗でしたがご飯食べるついでに市場のまわりを歩いて見に行きました。
マグロ初セリで有名な寿司ざんまいの築地店がありましたが、お持ち帰り用のお寿司とかを見てみたんですが、お魚はやっぱり福岡県の方が美味しそうかなCool
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フルフル

7月からの夜間診察に伴い、獣医師の出勤が時間帯別になります。
ちょっと複雑になりますので、獣医師を色分けして載せてみました。
院長が青、古沢がベージュ、前田先生ピンク、二宮先生緑、宮本先生オレンジ、柏原先生みずいろです。
縦軸は日にちです。

※急な学会出席や出張で、出勤が変更になる事があります。




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