獣医師日記

2015.03.16

口のがん(>_<)

口にできるがんとしてよく知られているものに
①悪性黒色腫(メラノーマ)
②線維肉腫
③扁平上皮癌 があります。

今回の患者さんは、知り合いの先生からサードオピニオンとして紹介していただいた患者さんです。
10ヶ月ほど前の去年のゴールデンウイークに、あごの下にちいさなかさぶたみたいなものができて『皮膚病』として治療してきたが治らず炎症やただれが悪化してきて、転院先の動物病院でどうも皮膚病ではないようなので診て欲しいとのご依頼でいらっしゃいました。

診察室に入ってこられた瞬間、不覚にも動揺{#emotions_dlg.112}
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見てわかるとうり、この子はたいへん瞳が綺麗な美人なのですが、それを裏切るかのように下の顎にひどい病変が{#emotions_dlg.130}
そっと口の中を診てみると下あごの左右歯肉に大きなしこりがあります。

レントゲンを撮ってみると病変の周囲の下顎骨が溶けていました。
アスペルギルスなどの真菌感染でも骨が溶けていくことはありますが、ここまでひどくなるのは悪性腫瘍の可能性がとても高いです。
溶けてスカスカになった骨は、自然と骨折してしまうことがあり、実際この子も数日後 下顎骨折してその痛みから何も食べられない状態に陥ってしまいました…..
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ここまで腫瘍が大きくなってしまうと、外科手術の目的は根治ではなく痛みや炎症をとってあげる緩和目的になってしまいます。
場合によっては安楽死も治療の選択肢に入ってくるほど重篤な状態です。
いろいろ思うところもありましたが、まだこの子が8歳と若く、この綺麗な瞳を見ちゃったら諦めることはできないね…..ということで飼い主さんと相談の上、少しでも可能性にかけようということで切除することになりました。

とはいえ、前述のように下顎骨折して何も食べれず、痛みと出血で衰弱した状況での手術です。
術前検査して輸血しながら手術することになりました。
手術直前の様子です。大丈夫かいな…..
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麻酔下でみてみるとこんなかんじ{#emotions_dlg.113}
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この子の場合、腫瘍がない第1後臼歯の後方で左右両方のあごを切断していきます。
下顎骨の切断にはいろいろな器具を使いますが、今回は線鋸(ワイヤーソー)と抜歯用の歯科用タービン(ドリル)を使用しました。
私が左手で持っているのが線鋸です。
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というわけで、とってみました。
※この画像は血が苦手な方はクリックしないようにしてください
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レントゲン撮ってみるとこんな感じ。
左側(L)の骨がスカスカでなくなってるところが下顎骨折してます
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無事手術が終わってスヤスヤ寝てます。
鎮痛剤が良く効いているせいもありますが、手術前より痛くなさそうです。
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下あごのほとんどを切除してしまったので、ほんとにご飯食べれるのかなーと心配していましたが、術後4日目にはちょっと食べやすいよいうに工夫すれば流動食を食べることができました{#emotions_dlg.098}
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いまは術後3週間経過しましたが、1日5食、飼い主さんが頑張って食べやすいように食事をつくってくださってます。
まだ痩せてはいますが、だいぶ元気になりました!
手術前の状態がひどかったせいか、飼い主さんも、そのお友達も、今のあごが無い状態はあんまり気にならないそうです。
バリカンで刈っちゃった毛が生えそろえばもっと可愛くなると思います{#emotions_dlg.105}
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ちなみに病理検査の結果は『口腔内扁平上皮癌』でした。詳しくはこちら⇒口腔内扁平上皮癌
扁桃に発生してくるもの以外は肺や肝臓へは転移することが少なく、局所のがんをがっつり取れば治る可能性の高いがんです。
いまさらですが、去年の5月にこの子に出会えなかったことだけが残念です。
がんがちっちゃいうちのほうが、治る可能性も術後の生活の質ももっともっと良かったはずです{#emotions_dlg.108}

同時に摘出した下顎リンパ節や、切断したあごの骨の先端にはがん細胞は残ってないとのコメントいただきました。
ただし、舌のつけねの部分だけががんが取りきれているか心配な状況ですので今後もよくみていかないといけません。

フルフル